先に、結論をお伝えします
期限の利益を失ったということは、原則として、住宅ローンを分割で返済できる権利を失ったということです。
ここからは、残っている住宅ローンを一括で返済するよう求められる可能性があります。
しかし、実際に残額を一括で支払える方は、ほとんどいません。
金融機関側も、それを想定したうえで次の手続きへ進めます。
そのため、期限の利益喪失通知が届いたとき、私が最初に確認するのは、
「次の手続きまでに、どれくらい時間が残されているか」
ということです。
通知が届いたことだけで、すぐに家を失うわけではありません。
ただし、何もしないまま時間が過ぎると、選べる方法が少なくなる可能性があります。
「期限の利益」とは何ですか
住宅ローンは、本来なら何千万円という金額をまとめて返済する契約です。
それを毎月決められた金額に分けて返済できるのは、「期限の利益」があるからです。
期限の利益を失うと、毎月の分割返済ではなく、残っている住宅ローンの一括返済を求められる可能性があります。
ただし、期限の利益を失う条件は、契約内容や通知の記載によって異なります。
まず、次の書類を確認してください。
期限の利益喪失通知
一括返済を求める通知
住宅ローン契約書
保証委託契約書
これまでに届いた督促状や催告書
難しい言葉が多く、一人で読めない場合は、そのまま持ってきていただいて構いません。
この通知が届くまでに、何が起きていたのか
多くの場合、住宅ローンの滞納が続き、金融機関から督促状や催告書などが届いたあと、期限の利益喪失に関する通知が届きます。
ただし、通知の名称、時期、手続きは金融機関や契約によって異なります。
ここまで、一人で抱えてこられたのだと思います。
電話に出られなかった
封筒を開けられなかった
家族に言えなかった
来月には何とかなると思っていた
誰へ相談すればよいか分からなかった
それを責めるつもりは、まったくありません。
住宅ローンのご相談に携わって30年以上、同じ状態で相談に来られた方をたくさん見てきました。
まず、届いている通知を一緒に並べ、現在地を確認するところから始めます。
最初に確認する5つのこと
期限の利益喪失通知が届いたら、次の5項目を確認します。
1.通知の日付
いつ期限の利益を失ったのか、または、いつ失う予定なのかを確認します。
2.支払期限・連絡期限
金融機関へ連絡する期限や、一括返済の期限が書かれていないか確認します。
3.請求されている金額
住宅ローン残高、滞納額、遅延損害金など、何を含む金額なのかを確認します。
4.現在の債権者と連絡先
銀行なのか、保証会社なのか、債権回収会社なのかを確認します。
5.次に予定されている手続き
代位弁済、保証会社への移管、競売などについて書かれていないか確認します。
書類の一部分だけで判断せず、これまで届いた書類を時系列に並べることが大切です。
このあと、どのように進むのか
保証会社が付いている住宅ローンでは、期限の利益を喪失したあと、保証会社が金融機関へ返済する「代位弁済」に進むことがあります。
代位弁済が行われると、返済を求める相手が、銀行などの金融機関から保証会社へ変わります。
ただし、保証会社が代わりに払ってくれたからといって、住宅ローンの返済義務がなくなるわけではありません。
保証会社は、代わりに支払った金額を本人へ請求する立場になります。
その後も解決しなければ、担保となっている自宅の売却や競売が検討されます。
ただし、
代位弁済までの期間
代位弁済後の交渉方法
任意売却を検討できる時期
競売申立てまでの期間
は、金融機関、保証会社、契約内容、滞納状況によって異なります。
「必ず何か月残っている」とは言い切れません。
お手元の通知の日付と契約内容を確認することが先です。
フラット35など、一般的な保証会社付き住宅ローンと流れが異なる商品もあります。
遅延損害金について確認してください
住宅ローンを滞納すると、契約に基づいて遅延損害金が発生する場合があります。
期限の利益を喪失した後は、住宅ローン残高全体を基準に遅延損害金が計算される契約もあります。
実際の利率、計算対象、開始日は契約によって異なります。
次の項目を確認してください。
遅延損害金の利率
いつから発生しているのか
何の金額を基準に計算されるのか
現在の合計請求額
今後どの程度増える可能性があるのか
「落ち着いてから考えよう」としている間にも、請求額が増える可能性があります。
焦って売却を決める必要はありませんが、確認は早めに行ってください。
私なら、最初に「何を守りたいですか」と聞きます
期限の利益を失ったと聞くと、多くの方は「もう家を売るしかない」と考えます。
しかし、私たちは最初から売却を前提にはしません。
まず、こうお聞きします。
「あなたは、何を守りたいですか」
この家に住み続けたい
子どもを転校させたくない
高齢の親と、あと数年は一緒に暮らしたい
家を手放しても、生活を早く立て直したい
家族には迷惑をかけたくない
督促や電話から一度離れたい
守りたいものが違えば、確認する方法も変わります。
家に住み続けられる可能性はあるのか
住み続けたいという希望がある場合は、すぐに諦めるのではなく、利用できる可能性がある方法を確認します。
金融機関との相談
期限の利益喪失後に、元の分割返済へ戻せるかどうかは、金融機関や債権者が判断します。
一般的には難しくなることが多いものの、契約内容や状況を確認せず、最初から不可能だと決めつけることはできません。
個人再生の住宅資金特別条項
条件を満たす場合、個人再生の住宅資金特別条項を利用し、住宅ローンを支払いながら、その他の借金を整理できる可能性があります。
ただし、誰でも利用できるわけではありません。
住宅ローンの契約状況、抵当権、収入、他の債務、代位弁済からの経過など、複数の条件確認が必要です。
利用できるか、利用すべきかは弁護士へ相談してください。
親族などによる買取り
親族などに自宅を買い取ってもらい、その後も賃貸などの形で住み続ける方法を検討できる場合があります。
ただし、
親族が購入資金を用意できるか
住宅ローンの審査に通るか
債権者が売却価格を認めるか
適正価格での売買になっているか
税金や契約上の問題がないか
などの確認が必要です。
簡単にできる方法ではありませんが、最初から可能性を捨てる必要もありません。
売却が必要になった場合
住み続ける方法を確認したうえで、売却が必要と判断したときに、通常売却または任意売却を検討します。
通常売却
自宅の売却代金で、住宅ローン残高と売却費用を支払える場合は、通常売却を検討できます。
任意売却
売却代金だけでは住宅ローンを完済できない場合は、債権者の同意を得て任意売却を検討します。
任意売却について最終的に判断するのは債権者です。
不動産会社が「必ず任意売却できます」「必ずこの金額で売れます」と約束することはできません。
また、任意売却後に住宅ローンが残る場合は、その後の返済についても確認する必要があります。
家を売ることだけでなく、売却後の住まいと生活を一緒に考えることが大切です。
正直に申し上げます|私たちだけでは決められないこと
期限の利益の喪失を取り消すかどうかを決めるのは、金融機関や債権者です。
任意売却を認めるか、いくらで売るかを最終的に判断するのも債権者です。
個人再生や自己破産が利用できるか、どの法的手続きが適切かを判断するのは弁護士です。
税金や差押えについて専門的な判断が必要な場合は、税理士や弁護士などへ確認します。
不動産会社一社だけで、すべてを決めることはできません。
だからこそ、最初に必要なのは、査定をする不動産会社だけではありません。
最初に探すのは、不動産会社ではありません
期限の利益喪失通知が届くと、慌てて不動産会社へ査定を依頼する方がいます。
しかし、査定だけでは、
家に住み続けられるのか
個人再生を検討できるのか
売却後に借金がいくら残るのか
税金や差押えの問題があるのか
家族の生活をどう守るのか
までは判断できません。
弁護士を一人探すだけでも、家の現実的な価格や売却期間までは分かりません。
まず最初に、あなたの味方をつくる。
最初に探すのは、不動産会社ではありません。
あなたに寄り添い、不動産・法律・登記・税金・売却後の生活まで一緒に考える「最強チーム」です。
相談者が一人で専門家を探し、それぞれに最初から事情を説明するのではありません。
必要な専門家が同じ方向を向き、相談者を中心に一つのチームとして動く。
すべては、ここから始まります。
よくある質問
期限の利益喪失通知が届いたら、すぐ競売になりますか
すぐ競売になるとは限りません。
ただし、代位弁済や競売申立てなど、次の手続きへ進む可能性があります。通知の日付、差出人、期限、契約内容を早めに確認してください。
一括返済できなければ、どうすればよいですか
金融機関または通知に記載された担当窓口へ連絡し、現在の手続きと今後の予定を確認します。
同時に、住み続ける方法、通常売却、任意売却、法的な債務整理など、検討できる方法を専門家と整理してください。
期限の利益を元に戻してもらえますか
金融機関や債権者の判断になります。
一般的には難しい場合が多いものの、契約内容や現在の状況によって異なるため、通知を確認せずに断定することはできません。
個人再生をすれば必ず家を残せますか
必ず残せるわけではありません。
住宅資金特別条項を利用するには条件があり、住宅ローンの状況や収入、他の債務などを確認する必要があります。弁護士へ相談してください。
相談すると、任意売却を依頼しなければなりませんか
いいえ。
相談は依頼ではありません。
届いた通知を確認し、今どの段階にいるのかを整理するだけでも構いません。
最後に
期限の利益を失ったことは、確かに一つの大きな区切りです。
しかし、終わりではありません。
ここから先の時間をどう使うか、誰を味方につけるかによって、その後の暮らしは変わります。
私たちにできるのは、残された時間の中で考えられる方法をお見せし、その場に一緒に立つところまでです。
どの道を選ぶかを決めるのは、相談者ご本人です。
焦って売却を決める必要はありません。
ただし、通知の日付と、次の期限だけは早めに確認してください。
そして、もし私たち以上にあなたへ寄り添い、人生全体を考えてくれるチームと出会えたなら、迷わずそちらを選んでください。
専門家コメント
期限の利益を失ったと聞くと、「もう何も選べない」と思われるかもしれません。
しかし、最初に行うのは、家を売ることではありません。
通知の日付と残された時間を確認し、ご本人が何を守りたいのかを聞くことです。
そのうえで、不動産、法律、登記、税金など、必要な専門家が一つのチームとして方法を考えます。
専門家コメント 宅地建物取引士 松本
相談窓口
その通知、一人で判断しなくて大丈夫です。
封を開けていなくても、そのままお持ちください。
残された時間を、私たちと一緒に確認するところから始めます。
プロフェッショナルを、あなたの味方に。
相談は無料です。相談したからといって、依頼する必要はありません。
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