「一括で返してください」と通知が来た 期限の利益の喪失とは何か

結論

住宅ローンについて、

「残っている金額を一括で返してください」

という通知が届いたら、

かなり驚かれると思います。

毎月8万円、10万円を返していたのに、

突然、

1,500万円。

2,000万円。

3,000万円。

を一括で返すよう求められる。

普通は、すぐ払える金額ではありません。

でも、

ここで一番大切なのは、

「払えないから、もう終わりだ」

と思わないことです。

この通知が届いたということは、

今までのように、

毎月分割で返していく前提が崩れている可能性がある

ということです。

そして、

ここから先は、

住宅ローンをどう払い続けるかだけではなく、

家をどうするのか。

売却したらいくら残るのか。

誰と交渉することになるのか。

競売までどれくらい時間があるのか。

そこまで含めて考える段階に入ります。


まず、「期限の利益」とは何か

難しい言葉ですが、

できるだけ簡単に説明します。

住宅ローンを借りたとき、

例えば、

3,000万円を借りたとします。

でも、

翌日に3,000万円全部を返すわけではありません。

30年。

35年。

といった期間をかけて、

毎月少しずつ返します。

これは、

決められた期限までは、その分のお金をまだ返さなくてもよい

という状態があるからです。

民法では、

期限は原則として債務者の利益のために定められたものと推定されています。

これが、

一般にいう

「期限の利益」

です。


期限の利益を失うと、何が変わるのか

住宅ローン契約では、

一定の条件に該当した場合に、

期限の利益を失う

という条項が定められていることがあります。

その場合、

今までのように、

毎月少しずつ返す前提ではなくなり、

残っている債務について一括返済を求められることがあります。

住宅金融支援機構でも、契約違反等により融資金残額の一括返済が必要となる場合があることを案内しています。

ここが、

住宅ローン問題の大きな分岐点です。


「期限の利益喪失通知」が来たら、まず見るところ

書類が届いたら、

全部理解しようとしなくて構いません。

まず、

次の部分を確認してください。

1.いつ期限の利益を失うのか

すでに失ったのか。

何月何日までに支払わなければ失うのか。

日付を見ます。


2.一括請求額はいくらなのか

残っている元金。

利息。

遅延損害金など。

何が含まれているのか。

まず金額を確認します。


3.誰から届いているのか

銀行なのか。

住宅金融支援機構なのか。

保証会社なのか。

債権回収会社なのか。

送り主は非常に大切です。


4.次に何が起こると書いてあるのか

保証会社への請求。

代位弁済。

法的手続。

担保不動産についての記載。

今後の手続について書かれている部分を確認します。


一括請求されたら、本当に全額払わないといけないのか

一括請求というのは、

その名のとおり、

残っている債務について一括返済を求められている状態

です。

ただ、

実際に一括で払える方は多くありません。

だから、

ここで必要なのは、

「どうやって2,000万円をすぐ作るか」

を考えることではありません。

むしろ、

「今の自分の状況で、次に何をすべきか」

を整理することです。


まず、家の価値を確認します

例えば、

住宅ローン残高が2,000万円。

家が2,600万円で売れそう。

なら、

売却費用などを考慮する必要はありますが、

通常の売却で住宅ローンを完済できる可能性があります。

一方、

住宅ローン残高2,500万円。

家の価格が1,700万円。

なら、

売却しても債務が残る可能性があります。

この二人では、取るべき方法がまったく違います。

だから、

一括請求通知が届いたら、

まず、

住宅ローン残高と不動産価格を並べます。


一括請求されたら、必ず任意売却なのか

いいえ。

一括請求された=必ず任意売却

ではありません。

通常売却で完済できる方もいます。

他の方法を検討できる方もいます。

また、

任意売却そのものが成立するかどうかも、

物件価格。

債権者。

差押え。

残された時間。

買主。

などによって変わります。

だから、

私は、

「一括請求が来たから任意売却しましょう」

とは言いません。

まず、

何ができるのかを確認します。


でも、時間は大切です

ここで一つ、

はっきり申し上げます。

期限の利益を失った段階では、時間を無駄にしないでください。

もう少し様子を見る。

来月になったら考える。

家族に話せるまで待つ。

別の会社も10社くらい回ってから決める。

その間にも、

次の手続へ進む可能性があります。

だから、

急いで売れ

ではなく、

急いで状況を確認してください

ということです。

任意売却は、時間との勝負です|どれくらいの期間が必要なのか


次に起こる可能性がある「代位弁済」

住宅ローンに保証会社が付いている場合、

期限の利益を失った後などに、

保証会社が金融機関へ支払いを行う場合があります。

これを、

代位弁済

といいます。

ここで、

とても大切なことがあります。

保証会社が払ったからといって、借金が消えるわけではありません。

保証会社が金融機関に支払った後は、

今度は保証会社などが、

返済を求める側になります。

つまり、

返す相手が変わる

と考えてください。


「銀行から連絡が来なくなったから、終わった」ではありません

代位弁済が行われると、

それまで住宅ローンを返していた銀行から、

直接の返済請求が来なくなる場合があります。

すると、

一瞬、

「何も言ってこなくなった」

と思うかもしれません。

でも、

借金がなくなったわけではありません。

次は、

保証会社などから連絡が来ることになります。

だから、

連絡が途切れたから解決した

とは考えないでください。


一括請求の通知を放置するとどうなるのか

ケースによって異なりますが、

返済問題が解決しない場合、

債権者が、

不動産競売など法的手続へ進む可能性があります。

そして、

競売の申立てがされれば、

裁判所の手続が始まります。

そこから、

物件調査。

評価。

期間入札。

開札。

売却許可。

代金納付。

などへ進んでいきます。

この段階になると、日程が具体的になっていきます。


一括請求の段階で相談する意味

一括請求通知が来ている。

まだ競売開始決定通知は来ていない。

この段階なら、

競売手続に入る前に確認できることがまだあります。

家の価格。

住宅ローン残高。

差押え。

税金滞納。

他の借入れ。

家族の状況。

次の住まい。

今後の収入。

これらを整理する時間があります。

だから、

この時期を、

ただ怖がって過ごさないでください。


税金の滞納がある場合

住宅ローンだけではなく、

固定資産税。

住民税。

その他の税金。

を滞納している方もいます。

その場合、

不動産に差押えが入っていることがあります。

任意売却を検討する場合には、

住宅ローンの債権者だけではなく、税金側との調整が必要になることがあります。

だから、

住宅ローンだけ見ていればいい、

というわけではありません。


他の借金がある場合

カードローン。

消費者金融。

事業借入れ。

クレジットカード。

親族からの借金。

それらが重なっている場合、

家を売っただけで生活再建できるのか、

別の整理が必要なのか、

考える必要があります。

この部分は、

必要に応じて、

弁護士などの専門家と一緒に考えます。

不動産会社だけで決めることではありません。


自己破産を先に決める必要もありません

一括請求が来ると、

「もう自己破産しかない」

と思う方もいます。

でも、

それも最初から決める必要はありません。

家を売った場合、

実際にいくら残るのか。

他の借金はいくらなのか。

収入はいくらあるのか。

その数字を確認したうえで、

法的整理が必要かどうかを、

弁護士と検討すればいいのです。

自己破産ありきでも、任意売却ありきでもありません。


家族にまだ話せていない方へ

一括請求通知を、

家族に見せられない方もいます。

2,000万円。

3,000万円。

そんな数字が書いてあれば、

言えない気持ちも分かります。

でも、

一人で抱え続けると、

判断まで一人でしなければならなくなります。

まず、

何が起きているのかを整理してください。

それから、

どう家族に話すのかを考えても構いません。


「一括請求が来ました」と、そのまま相談してください

専門用語は必要ありません。

電話で、

「住宅ローンの一括請求が来ました」

それだけで構いません。

通知を見ながら、

こちらから確認します。

いつ届いたのか。

誰からなのか。

いくらなのか。

期限はいつなのか。

家の場所。

住宅ローン残高。

そこからです。


書類は捨てないでください

一括請求通知。

その前に届いた催告書。

督促状。

保証会社からの書面。

住宅ローン契約書。

返済予定表。

裁判所からの書類。

全部、捨てずに置いてください。

順番に並べるだけで、

今どこまで進んでいるのかが見えることがあります。


「期限の利益を取り戻せますか」

これも、

よくある質問です。

答えは、

契約内容や債権者の対応によって異なります。

「絶対に元に戻せます」

とは言えません。

だから、

届いた通知と、

住宅ローン契約の内容を確認する必要があります。

ここも、

一般論だけで判断しないでください。


相談先を選ぶときに見ること

この段階になると、

時間も大切です。

だからこそ、

会社の名前や広告だけではなく、

実際に誰が動くのか。

を見てください。

債権者との調整を経験しているのか。

税金の差押えが出たら、

誰と考えるのか。

法的整理が必要になったら、

弁護士と話せるのか。

登記や権利関係なら、

司法書士と連携できるのか。

その人の後ろに、どんなチームがいるか。

私は、

そこを見ます。

任意売却は、誰に任せるか|私なら、こういう基準で選びます

相談時に使える質問はこちらです。

任意売却は、どこに相談すればいいのか|会社ではなく担当者を見る7つの視点


私たちに決められないこと

ここも正直に書きます。

  • 一括請求を取り消してもらえるか
  • 任意売却に応じてもらえるか
  • 売出価格
  • 引越し費用を確保できるか
  • 残債をどのように返済するか
  • 税金の差押え解除
  • 買主がいつ現れるか
  • 法的整理が必要かどうか

私たちだけでは決められません。

だから、

「全部何とかします」

とは申し上げません。

でも、

今の状況を確認し、

必要な人とつなぎ、

できることを一つずつ進めることはできます。


今日していただきたいこと

1.一括請求通知の日付を見る

作成日。

支払期限。

確認してください。

2.誰から届いたかを見る

銀行。

保証会社。

債権回収会社。

送り主を確認してください。

3.住宅ローン残高を確認する

通知の金額でも構いません。

4.家の現在価値を確認する

売ると決めなくて構いません。

まず数字を知るためです。

5.一人で判断できなければ、相談する

それだけです。


最後に

一括請求の通知を見たとき、

多くの方が、

「こんな金額、払えるわけがない」

と思います。

そのとおりです。

何千万円を、

すぐに払える方は多くありません。

だから、

大切なのは、

払えない自分を責めることではありません。

ここから何をするかです。

家はいくらなのか。

住宅ローンはいくら残っているのか。

誰が債権者なのか。

差押えはあるのか。

家を売らずに済むのか。

通常売却で解決するのか。

任意売却が必要なのか。

法的整理が必要なのか。

一つずつ確認すればいいのです。

一括請求が来たから、

人生が終わったのではありません。

でも、

時間を止めることもできません。

だから、

早く家を売るのではなく、

早く、自分の状況を知ってください。

そして、

その状況を一緒に整理してくれる、

本当の味方を見つけてください。

住宅ローンが払えない。30年以上、そんな方を見てきた私ならこうします。

一般社団法人 士業会 代表理事
株式会社エルライフ 代表取締役
松本 淳一

不動産の仕事に携わって40年近く。住宅ローンの返済に困った方のご相談に携わって30年以上になります。


よくあるご質問

Q1. 期限の利益とは何ですか。

簡単に言えば、

決められた期限が来るまでは、その分の返済を待ってもらえる利益

です。

住宅ローンでは、

毎月分割して返済できる状態を考えると分かりやすいと思います。

民法136条では、期限は債務者の利益のために定めたものと推定するとされています。


Q2. 期限の利益を失ったらどうなりますか。

住宅ローン契約の内容によって、

残っている債務について、

一括返済を求められる場合があります。

届いた通知と契約内容を確認してください。


Q3. 一括請求されたら、すぐ競売になりますか。

一括請求されたからといって、

翌日に競売になるという意味ではありません。

ただし、

返済問題が解決しなければ、

代位弁済や競売など、

次の手続へ進む可能性があります。


Q4. 一括請求されたら任意売却しかありませんか。

いいえ。

不動産価格と住宅ローン残高によっては、

通常売却で完済できる場合もあります。

まず数字を確認してください。


Q5. 期限の利益を取り戻すことはできますか。

契約内容や債権者の判断によって異なります。

一律に、

「必ず戻せる」

とは言えません。

個別の契約と通知を確認する必要があります。


Q6. 保証会社が代位弁済したら借金は消えますか。

消えません。

保証会社が金融機関へ支払った後は、

その保証会社などが返済を求める側になる場合があります。


Q7. 家族にまだ言っていません。それでも相談できますか。

はい。

まずご本人だけで、

今の状況を整理することもできます。

必要な情報共有がある場合は、

内容をご説明したうえで進めます。


まとめ

  • 期限の利益とは、期限まで返済を待ってもらえる利益
  • 住宅ローンでは、分割返済できる状態を考えると分かりやすい
  • 契約上の条件によって、期限の利益を失う場合がある
  • 期限の利益を失うと、残債の一括返済を求められる場合がある
  • 一括請求されたからといって、すぐ競売とは限らない
  • ただし、放置すれば次の手続へ進む可能性がある
  • 保証会社が代位弁済しても、借金は消えない
  • 一括請求=必ず任意売却ではない
  • まず住宅ローン残高と家の価格を確認する
  • 税金や他の借金も含めて整理する
  • 自己破産ありき、任意売却ありきで決めない
  • 早く売るのではなく、早く状況を知る
  • そして、本当の味方を見つける

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  • 家を売れば住宅ローンを完済できるのか知りたい
  • 売っても借金が残りそう
  • 税金も滞納している
  • 他の借金もある
  • 自己破産しかないのか不安
  • 家族にまだ話せていない
  • 任意売却が間に合うのか知りたい

最後に

「一括で返してください」

という言葉を見ると、

ほとんどの方が、

「無理や」

と思うと思います。

当然です。

何千万円もの住宅ローンを、

その場ですぐ返せる方は、

多くありません。

でも、

払えないから終わりではありません。

大切なのは、

その通知を机の中へ入れて、

見なかったことにしないことです。

今、

誰が債権者なのか。

住宅ローンはいくら残っているのか。

家はいくらなのか。

税金の差押えはないか。

他の借金はどうなのか。

家族の生活はどうなるのか。

それを一つずつ整理してください。

その結果、

通常売却で解決できるかもしれません。

任意売却を検討するかもしれません。

法律の専門家と一緒に、

別の方法を考えるかもしれません。

答えは、人によって違います。

だからこそ、

最初から方法を決めないでください。

一括請求が来たら、

まず自分の現在地を知る。

そして、

一人で抱えない。

あなたの人生を一緒に考えてくれる味方を見つける。

そこからです。